新刊情報 ★★★★『認知症予防テキストブック』

ninchisyoyobotxsbook超高齢社会の現在、認知症患者が急増し、全国で462万人に達したことを推定されたことは医療と福祉の対策のうえで喫緊の課題になっている。

2013年12月11日、G8(主要8ヶ国)の閣僚級が話し合う、世界で初めての「認知症サミット」が英国のロンドンで開催され、「2025年までに認知症の治療法を見出すことを目標に、G8各国は研究費を大幅に増額する」等の共同声明が採択された。サミット閉幕にあたり、英国のデビットキャメロン首相は「きょう(12月11日)この日、認知症に世界が立ち向かい始めた日として刻まれることを願っている」と演説し、各国に協力を呼びかけた。

私たちの日本早期認知症学会(志村孚城理事長)はできるだけ早期に認知症を診断して治療をすすめる事を提唱しているが、さらに症候学的症状が出現する以前の未病の状態を対象として、発症を予防する診断と対応についても努力していくことが期待されている。


「序にかえて」より
社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター  名誉センター長 聖マリアンナ医科大学 特別顧問 長谷川 和夫

定価 本体 5000円+税  ISBN 978-4-904363-50―8 C3047
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******【序にかえて】つづき******

いくつかの課題について概述したい。

1)症候学的診断と治療に習熟すること

 患者の早期症状に気づきをもつことに習熟することが第1である。新井(1は認知障害とBPSD(行動心理症状)の出現が互いに症状形成に影響することをふまえ、治療を組み立てていくことを指摘している。早期に限らず長い臨床経過のなかで認知障害とBPSDがいつ出現するのか、ステージと出現時期との関係を理解することは認知障害とBPSDの治療を両者の関連から考えていくうえで重要である。

2)認知症診療にパーソンセンタード ケアの理念を活かすこと
 英国の心理学者、ブラッドフォード大学教授のTom Kitwood(1997年)は、認知症ケアの理念としてパーソンセンタード ケアを提唱した。
 認知症になると何もかも理解できなくなる。話された事もすぐに忘れてしまうから私が代行しましょうという事になって、本人を正面にすえることがなおざりにする傾向がおこりそして、疾病や症状を対象にしたケアが主流になりがちになる。言うまでもなく、ケアを受ける本人をまず人として尊重することがあるべき姿であると考える。彼の名著 Dementia reconsidered 邦訳すると認知症の再検討であるが、副題としてperson comes first と“人が最初に来る”と直訳される(3。これは、まず個人のもつユニークな独自性、神の肖像として創られたという尊厳性を内包している。本人を中心にして対応すること。これは個人の視点にたつこと、本人の内的体験を理解すること、そしてユニークな誰も他者が代行できない尊厳性、その人らしさを尊重することにつながる。

3)認知症アセスメント スケールの課題

 恩師 新福尚武先生の指示をうけて、1968年頃から東京都内の老人福祉施設等の精神保健調査を行った時に長谷川式痴呆審査評価スケール(HDSと略称)を作成し、1974年に公表した。その後、1981年に一般老人を対象として文化状況に影響を受けないカルチャーフリーの設問に改めて、改訂長谷川式認知症スケール(HDS-Rと略称)として公表した。HDS-Rは9問より構成される。得点を加算して、満点は30、20以下を認知症の疑いと判定する。各設問の意義を理解して施行する。また本スケールだけで認知症と判定してはならない。高学歴、高職歴の場合、アルツハイマー型認知症の人でも満点をとることがあり、逆に認知機能が正常であるにもかかわらず、うつ状態や寝たきり状態で気力低下になった場合では20点以下を示すことがある。また本スケールを施行するに当っては、お願いするという姿勢をもつことである。年に1回が望ましい。特別の目的があって、複数回を短期間をおいて行う場合は、本人と家族の了解をとってから行うことである。

4)診療時のコミュニケーションのポイント

認知症ケアの作法である。
(1)自分の服装、態度、あるいは言葉づかいに配慮する。
(2)あるがままの現在のその人を受容する。謙虚な気持ちで寄り添うこと。ケアギバーcaregiverではなくてケアパートナー care partnerの心である。
(3)聴くことを第1にすること。
(4)目を見て話すこと。
(5)明るく楽しい気分で接すること。
(6)感性を持っていること。シンパシー sympathy 同情ではなく empathy 共感である。
(7)“連携”は常に心がけること。かかりつけ医と専門医、多職種間の連携チームをもつこと。ことに高齢社会を迎えた現在、地域包括支援体制として、医療、福祉、介護などの連携が求められている。

3.11の東日本大震災以来、日本は急速に変容しつつある。さらに社会保障の改変が始まり、国の財政は厳しい状況が続いていて、今までとは異なる対応に迫られている。この様な時期にあたり、私はかの有名な宗教哲学者ニーバーの祈りを想いおこすのである。末尾にこれを掲げて私たちは新しい覚悟をもちたいと念願する。

ラインホルト ニーバーの祈り(1942)

神よ、
変えられないことを静かに受容する冷静さを
変えるべきことを変えていく勇気を
そしてこの二つを見分ける英智を
私たちにお与えください。

******目 次*****


序にかえて


第1章 総論


Ⅰ.医学的観点を中心に


1.認知症と軽度認知障害

(1)認知症

(2)軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment : MCI)

2.認知症の「原因疾患」と「認知症の人」

3.国際的に使われている診断基準

4.診断の困難さ:高齢者の症状形成の複雑さ

5.予防とは

6.治療的介入方法

7.非薬物的アプローチ

8.薬物療法

9.日本の現状

10.今後への期待


Ⅱ.生体医工学の観点から


1.生体医工学とは

2.認知症診断に貢献した生体医工学

3.認知症予防と生体医工学

3.1 脳機能関係計測

3.2 身体機能関係計測

3.3 脳機能リハビリテーション・生活支援

3.4 身体機能リハビリテーション・生活支援


Ⅲ介護・福祉的観点から


1.認知症介護と認知症予防および早期認知症支援への留意点

2.「新オレンジプラン」に指摘されている認知症予防や早期認知症に対する介護・福祉

2.1 認知症の理解を深めるための普及・啓発の推進

2.2 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供

2.3 若年性認知症施策の強化

2.4 認知症の人の介護者への支援

2.5 認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進

2.6 認知症の予防法,診断法,治療法,リハビリテーションモデル,介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進

2.7 認知症の人やその家族の視点の重視


第2章 各論


Ⅰ.アルツハイマー病(AD)−とくに前駆状態,初期状態を中心に−


1.脳の病理学的進行と認知機能や日常生活機能障害との関連

2.生理的な認知機能の衰え

2.1 良性健忘と悪性健忘

2.2 Age-Associated Memory Impairment(AAMI)とAge-Associated Cognitive Decline(AACD)

3.認知症の前駆状態を意識した概念

3.1 軽度認知機能障害Mild Cognitive Impairment(MCI)

3.2 主観的認知機能低下Subjective Cognitive Decline(SCD)

4.アルツハイマー病(AD)の初期症状

記憶障害/見当識障害/遂行機能の障害/人格および感情面の障害

5.重症度分類の活用

5.1 Clinical Dementia Rating(CDR)

5.2 Functional Assessment Staging(FAST)

6.診断の流れ

6.1 患者および家族への問診および病歴聴取

6.2 身体的診察

6.3 神経心理検査

6.4 血液,尿,髄液検査

6.5 神経画像検査

7.早期介入

7.1 コリンエステラーゼ阻害薬

7.2 生活習慣の指導

7 .3 防御因子についての指導

         身体活動/栄養指導


Ⅱ.レビー小体型認知症の早期介入の重要性


1.レビー小体型認知症(DLB)について

2.DLBの診断基準について

3.DLBの早期診断・早期介入の重要性

4.DLBを早期に発見するには

5.DLBの早期介入と早期治療

6.DLBの予防をめぐって


Ⅲ.血管性認知症(VaD)


1.概念と診断

2.血管性認知障害とは

3.臨床症状

3.1 多発梗塞性認知症

3.2 小血管病性認知症

         実行機能障害/記憶障害/人格・感情障害/身体症状

3.3 Strategic Single Infarct Dementia

3.4 Post-Stroke Dementia

4.検査所見

4.1 頭部MRI、CT画像

4.2 脳血流SPECT、PET

4.3 脳脊髄液・血液バイオマーカー

4.4 遺伝子

         内膜と中膜に病変を来す疾患/中膜に病変を来す疾患/基底膜に病変を来す疾患

5.予防と治療

5.1 血管因子と認知症の関係

         高血圧症/糖尿病/慢性腎臓病(CKD)/虚血性心疾患・心不全

5.2 脳血管障害のタイプ別予防

         アテローム血栓性脳梗塞の予防/ラクナ梗塞の予防/心原性脳塞栓症および奇異性脳塞栓症の予防/脳出血の予防

5.3 中核症状(認知機能障害)に対する治療

5.4 周辺症状(BSPD)に対する治療

5.5 脳血管障害の合併症に対する治療

5.6 末期の治療とターミナルケア


Ⅳ.前頭側頭葉変性症(FTLD)


1.概念の変遷

2.疫学

3.病理サブタイプによる分類

3.1 FTLD-tau

3.2FTLD-TDP43

3.3 FTLD-FUS

3.4 その他

4.臨床的サブタイプによる分類とその臨床症候

4.1 前頭側頭型認知症

         脱抑制,我が道を行く行動/自発性の低下(アパシー)と無気力/思いやりの欠如または共感性の欠如/常同・強迫行動/食行動異常と口唇傾向/認知機能障害/病識の欠如/被影響性の亢進ないし環境依存症候群/転導性の亢進,維持困難/運動ニューロン疾患/鑑別診断

4.2 意味性認知症(SD)

         語義失語(具体語の意味理解障害)/類音的錯読・錯書/言語以外の意味記憶の障害/SDの行動障害

4.3 進行性非流暢性失語(PNFA)

5.各種検査

5.1 byFTDの画像所見

5.2 SDの画像所見

5.3 PNFAの画像所見

5.4 関連遺伝子による画像所見の特徴

6.治療とケア

6.1 薬物療法

6.2 非薬物療法

7.現在の課題と今後の可能性

   早期診断,早期治療について/介護者の支援/自動車運転/今後の可能性


Ⅴ.看護学的視点からの早期認知症予防


1.早期認知症から実践するパーソン・センタード・ケア

2.老年症候群(Geriatric Syndrome)における早期認知症予防

3.認知症の危険因子と保護因子

4.地域高齢者に対する早期認知症予防

5.急性期病院における早期認知症予防:急性期病院における認知症高齢者の特徴5.1 認知症予防のためのコミュニケーションに対するケア

5.2 急性期病院における認知症の症状のある高齢者の治療・看護の課題と本人の視点

5.3 急性期病院における意図的なタッチケア(タクティールケア)


第3章 予防のためのスクリーニング法の最前線


Ⅰ.スクリーニングテストの要件


1.スクリーニングの条件

1.1 経済性

1.2 放射線被曝

(1)放射線の発見/(2)放射線防護の考え方/(3)放射線防護の基準/(4)医療行為のための被曝

2.スクリーニングにおける神経心理検査や生活習慣検査

2.1 アルツハイマー病(AD)

2.2 血管性認知症(VaD)

2.3 レビー小体型認知症(DLB)

2.4 前頭側頭型認知症(FTLD)


Ⅱ.認知症初期症状の医学的診断


1.アルツハイマー型認知症(AD)の医学的診断

1.2 ADの「早期診断」をめぐって

1.2 AD早期診断の実際

         症例

2.レビー小体型認知症(DLB)の医学的診断

2.1 DLBの早期診断をめぐって

2.2 DLBの前駆症状

2.3 DLB早期診断の実際

         症例


Ⅲ.前頭前野のスクリーニングテスト


1.前頭前野の機能

2.これまでの前頭前野機能検査

2.1 Wisconsin Card Sorting Test(WCST)

2.2 Frontal Assessment Battery at Bedside(FAB)

2.3 Five Cognitive Functions(ファイブコグ:FC)

2.4 Stroop Color-word Test

2.5 Trail Making Test(TMT)

2.6 Mini-Mental State Examination(MMSE)

3.認知症予防のための前頭前野スクリーニングテストの要件

4.認知症予防のためのスクリーニングテスト

4.1 Color Kanji Pick-out Test(CKPT)の開発の経緯と検査の概要

4.2 CKPT実施による前頭前野領域の脳血流

4.3 CKPTの妥当性

Ⅳ.記憶再生の初期診断の提案 5物品遅延再生テストの有用性

1.記憶機能の一次検査

1.1 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

       (1)検査方法/(2)判定

1.2 Mini-Mental State Examination(MMSE)

       (1)検査内容/(2)判定

1.3 5物品遅延再生テスト

       (1)5物品遅延再生テストの方法/(2)5物品遅延再生テストにおける近時記憶障害の有無のカットオフ値/(3)「5物品遅延再生テスト」による近時記憶障害の検出の有用性

1.4 「5物品遅延再生テスト」による近時記憶障害の検出の意義

2.認知症の早期診断方法の手順


Ⅴ.近赤外分光法(NIRS)の活用方法−NIRSによる認知機能の評価−


1.NIRSの基礎

2.NIRSによる脳機能イメージング

3.NIRSによる認知機能の評価

3.1 認知機能と前頭前野の血流変化との関係

3.2 咬合不全の認知機能に対する影響

3.3 運動の認知機能に対する影響

3.4 銀杏葉エキスの認知機能に対する影響


Ⅵ.脳電位計測による一検診法の提案


1.脳電位の発生

2.脳電位の離散的パワースペクトルからマーカーへ

3.類似度

4.感度特異度特性

5.SPECT画像とNAT画像との対応

6.差分類似度グラフとADの早期発見

7.MMSEスコアとの対応

8.脳内不活性部位の3次元推定

9.FDG-PETの場合


編集後記

以上