新刊情報 ★★★★展開図でわかる 「個」から「地域」へ広げる保健師活動

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発刊にあたって

 

 筆者が保健師になった動機は、学生の時の実習にある。当時の科目名は「公衆衛生看護学実習」だったのかどうかも覚えていない。しかし、学生である私は保健師の動きに感動し、目の前で、「地域」の力が見たのである。心底、「おもしろい」と思った。保健師活動に魅力を感じた。

 

 私は、東京都内の保健所で実習させてもらった。新聞の第一面を騒がせた感染症が発生したこともあり、保健所の危機管理の実践に身を置くことができた。学生の私たちは、遠目で所内の動きを見ていただけではあるが、その状況は今でも記憶として鮮明に残っている。

 

 当時の私の実習指導者である保健師の主査は、所長、課長と協議を重ね、保健師に指示を出していた。「大変ですね」と声をかけるほかの部署の職員に対して、主査は「こんなに忙しいのにちっとも痩せないのよ」と答えていた。こんな会話もはっきりと覚えている。緊迫した状況にもかかわらず、逆に周囲を気遣う、保健師の懐の深さに私は感動を覚えた。

 

 

寛大な指導体制の中で、私たちは、自由に家庭訪問を重ねた。もちろん、健康教育や3歳児健康診査なども見学実習を行った。3歳児健康診査で「爪かみ」を主訴に心理相談を受けている母子がいた。そのフォローの家庭訪問をさせてもらった。家庭訪問先の家は、平屋で、庭に面したお縁から家に上がる住居であった。母親が内職の手を止めずに私に声をかけ、そのそばに3歳児の女児がひとり遊びをしていた。私は、教科書の記述どおりの母子の状況に直面し、心が動揺した。このようなケースはどうしたら良いのか・・・、と考えた。社会資源の資料から近所の児童館の遊びの教室を見つけた。勇気を振り絞って見学に行き、職員にケースの状況を話し、利用の可否を聞いた。その職員は、利用可能であることをとても優しく答えてくれた。有難かった。できるものなら今からでもお会いしてお礼が言いたいと思っている。

 

一方、もうひとつのケースにも家庭訪問に行った。3歳児健診で「ことばが出ない」という主訴で相談を受けたケースであった。2階への階段を上がった所に、ベビーベッドの枠を利用したサークルがあり、その中におもちゃがいっぱい入れられていて、ひとり遊びをしていた。大きな瞳で私に何かを訴えるように見つめてくれた。

 

前者の「爪かみ」のケースが児童館に見学参加する日、児童館の門で私は母子と待ち合わせをした。児童館を気に入ってくれるかどうかとドキドキして待っていると、向こうの方から、母子二組がやってきた。一瞬、私は混乱した。しかしすぐに、もう一組の母子が「言葉の遅れ」のケースであることがわかった。母親同士が友達だったのである。「爪かみ」のケースの親が誘ったとのことだった。後者の「言葉のおくれ」のケースの親の方が、心配は深刻で児童館の遊びの教室の利用を望んでいた。保健師学生としての力量不足が恥ずかしい。

 

二組の親子を見て、私は、「地域の力」を強烈に感じた。保健師の学生の判断が怪しくても、住民が育児力を発揮して健康にむかって行動を起こしたのである。学生の私は、「保健師がしてあげる」という感覚を完全に払拭された。住民同士のつながりの意味を考える時、いつもこの経験を振り返る。私の保健師活動の原点である。

 

この地域の力に関わっていける保健師活動に、私は魅せられた。これが、私が保健師になった理由である。その後、地域精神保健活動や難病対策事業に携わる中で「地域の力」を発見して施策に繋げる保健師活動の魅力を、積み重ねることができた。

 

今回、「個」から「地域」に広がる保健師活動について、「展開図」を使用して可視化することを試みた。保健師活動の実際を言語化し、「展開図」にあてはめてダイナミックに地域に広がる活動を説明した。保健師活動に接することが初めての学生にも理解できるような平易な表現に心掛けた。また、現任保健師が自信をもって自らの仕事を進めることができるように、保健師の動きに説明を入れた。保健師の日常業務を「展開図」で意味づけることによって、保健師活動の魅力を再確認し、誇りをもって保健師活動が展開されれば幸いである。

 

2012.8.13 研究室にて記す

 

守田孝恵

 

目次

 

  第1章「保健師活動の展開図」で示す保健師活動の理論と実践-「個」から「地域」へひろげる保健師活動‐

 

Ⅰ保健師活動の理論と実践

 

Ⅱ地域保健師活動の展開図

 

Ⅲ保健師と対象の関係

 

Ⅳ保健師の活動方法の特徴

 

Ⅴ保健師活動の展開

 

Ⅵ保健師活動の展開図の解説

 

Ⅶ「個」から「地域」へ広げる活動の意味

 

Ⅷ「保健師活動の展開図」の活用

 

第2章 家庭訪問-精神障害者の家庭訪問から生活支援事業への推進‐

 

Ⅰ実践(問題発見)

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断

 

Ⅳ活動計画(健康課題の対策)

 

Ⅴ実践

 

Ⅵ評価

 

第3章 健康教育-高齢者クラブへの出前講座から地域の認知症予防対策への展開‐

 

Ⅰ実践(問題発見)

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断

 

Ⅳ活動計画(健康課題の対策)

 

Ⅴ実践

 

Ⅵ評価

 

第4章 健康教育-生活習慣病予防教室から地域の健康づくり計画参画への展開‐

 

Ⅰ実践(問題発見)

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断

 

Ⅳ活動計画(健康課題の対策)

 

Ⅴ実践

 

Ⅵ評価

 

第5章 健康相談‐精神通院医療申請窓口の対応から精神障害者の地域生活支援への展開‐

 

Ⅰ実践(問題発見)

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断

 

Ⅳ活動計画(健康課題の対策)

 

Ⅴ実践

 

Ⅵ評価

 

第6章 健康相談‐特定疾患患者の相談から地域の健康危機管理体制への展開

 

Ⅰ実践(問題発見)

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断

 

Ⅳ活動計画(健康課題の対策)

 

Ⅴ実践

 

Ⅵ評価

 

第7章 健康診査-3歳児健診から障害児の生活しやすい地域づくりへの展開‐

 

Ⅰ実践(問題発見)

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断

 

Ⅳ活動計画(健康課題の対策)

 

Ⅴ実践

 

Ⅵ評価

 

第8章 グループ育成―病院保健師の病室訪問からNICUママ友づくりへの展開―

 

Ⅰ実践(問題発見)

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断

 

Ⅳ活動計画(健康課題の対策)

 

Ⅴ実践

 

Ⅵ評価

 

第9章 グループ育成・地域組織への支援-将来構想会議の発言から健康づくり推進グループの結成への展開

 

Ⅰ実践(問題発見)

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断

 

Ⅳ活動計画(健康課題の対策)

 

Ⅴ実践

 

Ⅵ評価

 

第10章地区組織への支援―保健推進員がかかわる健康相談から高齢者の健康・生きがいづくりへの展開

 

Ⅰ実践

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断

 

Ⅳ活動計画

 

Ⅴ実践

 

Ⅵ評価

 

第11章 連携・調整―介護支援専門員との連絡から地域の介護支援ネットワーク構築への展開―

 

地域の概況および事業の背景

 

Ⅰ実践(問題発見)

 

Ⅱ実態把握

 

Ⅲ地域診断 

 

Ⅳ活動計画(健康課題の対策)

 

Ⅴ実践

 

 ◆執筆者

 

守田 孝恵  山口大学大学院医学系研究科 地域看護学分野教授

 

檀原 三七子 山口大学大学院医学系研究科 地域看護学分野准教授

 

兼平 朋美  山口大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程

 

越田 美穂子 香川大学医学部看護学科 地域看護学講座准教授

 

山田 小織  福岡大学医学部看護学科 地域看護学領域講師

 

伊藤 悦子  山口県宇部健康福祉センター

 

永井 潤子  元青梅市役所

 

宮崎 博子  宇部フロンティア大学人間健康学部 看護学科准教授

 

迫山 博美  山口大学大学院医学系研究科 地域看護学分野助教

 

◆編集委員

 

守田 孝恵

 

檀原 三七子

 

兼平 朋美

 

越田 美穂子

 

迫山 博美

 

◆編集協力者

 

山崎 秀夫 浜松大学健康プロデュース学部教授

 

定価 2800円(税別)

 

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