新刊情報 ★★★★エビデンス習得のための 看護疫学

   
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著者 牧本 清子

定価 2,940円  (税込み)
2010年9月 刊

根拠(エビデンス)に基づく実践の重要性が強調されるようになってから20年以上がたつが、看護領域での疫学研究はまだ少ない。疫学は、単なる研究方法の習得だけでなく、危機管理にも重要なデータを提供することができる。

 

根拠(エビデンス)に基づく実践の重要性が強調されるようになってから20年以上がたつ。エビデンスとして提唱できる研究にするためには、疫学の知識が必要不可欠である。

 しかし、疫学は難解な学問と思われているようで、看護領域での疫学研究はまだ少ない。疫学には、推理小説の謎解きのような面白さがあり、その面白さを紹介する本が必要と考えた。
この本は、興味深いアウトブレイクや、糖尿病などの慢性疾患の原因を究明するためのさまざまな研究を紹介し、物語を読みながら研究手法を学べるように工夫した。
疫学は図や表を効果的に活用し、結果を解釈することも重要であり、できるだけ調査・研究結果を図表で示すようにした。
 
疫学は、単なる研究方法の習得だけでなく、危機管理にも重要なデータを提供することができる。この本で紹介したレジオネラ症やノロウイルスなどのアウトブレイク事例は、危機管理を考える上で、リスクの認識、具体的な対策などの要素を多く含んでいる。
医療施設だけでなく、医療施設だけでなく、公共施設や客船などの管理者は、疫学的リスクの知識が必要な時代となっている。
 この本で、疫学の楽しさを味わい、疫学に興味を持ってもらえる人が増えることを期待する。

                            本書「まえがき」より 牧本清子(著者)



目次
第1章 糖尿病は遺伝の影響か?環境の産物か?

1.発病率(り患率) incidence と有病率 prevalence のお話
2.1型糖尿病,旧名IDDM(インスリン依存型,小児糖尿病)の疫学
1)危険因子 risk factors 遺伝要因と環境要因
2)発生率と温度・日照時間との関係
3)コホート研究 cohort study
4)ウイルス感染説
3.2型糖尿病の疫学
1)米国の先住民・ピマPima族における2型糖尿病の問題
(1)飢饉を生き抜く"thrifty gene倹約遺伝子"説の提唱
(2)倹約遺伝子説の否定と倹約遺伝表現型説thrifty phenotypeの台頭
(3)糖尿病と胎児期の環境との関係
2)どうすれば糖尿病は防げるのか?

第2章 危険な"いい湯"-レジオネラ菌の台頭身近な新興感染症
1.日本におけるレジオネラ症の大アウトブレイク
1)アウトブレイクの経緯
2)アウトブレイク発生時の対応について学ぼう
2.オランダのフラワーショーで起こったレジオネラ症のアウトブレイク
3.街を歩けばレジオネラ菌にあたる?-スペインの街で起こったアウトブレイク

第3章 猛毒として妙薬として:二つの顔をもつボツリヌス菌
1.ボツリヌス毒素による食中毒
2.猛毒から新薬開発への道
3.臨床研究のプロセス
4.興味深いアウトブレイク事例

第4章 疫学の点と線-流行曲線と地図から学ぶ感染症の猛威
1.ノロウイルスの台頭
2.共通感染源common sourceの流行曲線
3.麻疹(はしか)の人・人感染propagatedの流行曲線

第5章 やや奥の深い疫学の手法と指標
1.交絡因子 confounderとは?
2.加算効果 additive effectと交互作用 interaction
3.効果修飾 effect modification
4.寄与危険と寄与危険割合
5.年齢調整死亡率
6.有意差の検定

第6章 エビデンスの評価

第7章 鶏が先か卵が先か:因果関係causal association の証明は可能か

第8章 信頼性 reliability と妥当性 validity -この似て非なるもの
1.測定における信頼性と妥当性
2.測定者の信頼性-測定者内信頼性と測定者間信頼性
3.標本抽出における妥当性

第9章 検診(スクリーニング)の精度-癌なのか癌でないのか?それが問題だ
1.検診の精度の指標
2.測定のカットオフポイント(基準値と異常値を区切る値
3.ROC曲線:複数の測定方法の精度を比較

第10章 統計のお話
1.統計の目的
2.変数の種類
3.変数の分布
3-1 分散varianceと標準偏差standard deviation
3-2 分布の標準化と母集団の推定
3-3 母集団の平均値の推定
4.有意差の検定
4-1 t検定t-test
4-2 カイ二乗検定chi-squared test
4-3 相関correlation
4-4 回帰regression

第11章 他山の石-B型肝炎とC型肝炎の文献のレビュー
1部 B型肝炎のアウトブレイク
2部 C型肝炎 隠れたアウトブレイク


筆者略歴

大阪厚生年金病院高等看護学院卒業後、臨床経験を経て米国に留学。オレゴン大学で学士号(文化人類学専攻)を取得し、テキサス大学公衆衛生学部疫学学科で修士、博士号を取得する傍ら、さまざまな疫学研究のプロジェクトに参画。
その後、ワシントンDCで、アルコール依存の疫学研究を行い、ワシントン大学でヘルスサービスリサーチを行なった。
 米国で14年間、留学・勤務後、金沢大学医学部第2病理学教室講師、同大学医学部保健学科教授をへて、大阪大学大学院医学系研究科教授に着任し現在にいたる。帰国後は院内感染のサーベイランスの普及や、看護疫学の普及に努めている。