新刊情報 ★★★★ボケ介護日誌

 
 
吉川武彦 著
定価 1,680円(税込み)
2008年6月 刊
精神科医の著者が認知症の介護を通してケアの核心に迫る第1章は「ボケは回復する!」です。

 

 

はじめに

「ボケ」るとはどういうことなのか、いったい人はなぜ「ボケ」るのかといったことを、長い間、考えてきました。もちろん、まだその答えが出たわけではありませんが、ここまで考えてきたことを纏めてみようと思いました。私は、精神科医です。臨床医ですからそれなりに「ボケ」た方を診てはきました。それでも答えはでません。
 医学を学んだものとして、脳の障害の結果として表れる「痴呆」とか「認知症」については多少なりとも知ってはいるつもりです。また一般的に言う「ボケ」という言葉が、専門用語としては「痴呆」とか「認知症」ということは知っているのですが、でも私のこころの奥底で、それは違うというささやく声がしています。
 かつて『老いとボケ-こころの薄墨』という本を書いたことがあります。そこでは「ボケ」は〝こころに薄墨がかかったような状態〝をいうと考えて「ボケ」を説明したつもりです。また、思い切って一般用語でいう「ボケ」は日常語であり、それに対して「痴呆」とか「認知症」というのは医学用語であり専門用語だと言ったことがあります。
 駆け出しの精神科医のころ出会った患者さんから教えていただいた「ボケ」るとはどういうことか、人はなぜ「ボケ」るのかということ考え始めてから40年以上が経ったとき、父が「ボケ」ました。父を超えられなくて地団駄踏んだこともあった私ですがその父が「ボケ」たと母に告げられたときのショックは大きなものでした。
 その父と、父の「ボケ」とつきあいながら、精神科医としての40年の経験をつぎ込んだつもりです。もちろんすべての「ボケ」が回復すると言うつもりはありませんが、いったん「ボケ」ても回復することは確かです。そのことは確信を込めて申し上げることができます。ですから本書の第一章のタイトルを『「ボケ」は回復する!』としたのです。
 多くの方々が、本書を手にとって下さることを願っています。「ボケは治らない」と決めつけるのではなく、「ボケた人とどのようにつきあったらいいのか」を考えることから始めていただければ嬉しいのです。誰しも「ボケ」たくはないとお考えでしょうが、それは「ボケ」に対する偏見があるからといえるからなのです。

目次

はじめに

第一章 ボケは回復する! 

・ 精神科医になってしまった
・ 精神科医の手探りの日々
・ 老人入院患者が増えはじめた
・ ボケ老人をかかえた夫婦の悩み
・ ボケ老人が病院を出る日
・ ボケが治った!
・ 社会が老人を捨てた
・ 沖縄の本土復帰と私
・ 沖縄の老人パワーを奪った本土復帰
・ 老人が「宝物」であった時代

第二章 ドクターKのボケの介護
 
・ 生活が単調になるとあぶない!
・ 〝思い出のなかの父親〞を取り戻したいと考えて
・ N区で出会ったもうひとつのボケとドクターK
・ 乗り越えなければいけない地域の壁
・ 近所の絆を復活させたい
・ 「壁」はどこにでもあるが
・ 「家族の壁」を取り除く
・ 家族の負担を減らす介護の仕組み

第三章 ボケの境界線は見えるもの 

・ 光明を信じてのケアの日々
・ ボケ回復のチェックは、こんなところに
・ 四十五歳は心の曲がり角
・ 記憶力を錆びつかせない秘訣
・ ボケの引き金は、何なのか
・ 「自分には関係ない」は、赤信号
・ 私の創作した「ボケ介護の鉄則」
 『話しかけ介護十則』
  『ボケ介護十戒(十の戒め)』
  『ボケ介護「あいうえお」』
・ 脳を刺激する、歩行会話
・ 笑い合いがボケを追い払う
・ 「きく」に徹するためには

第四章 老人はこうしたケアを待っている
 
・ こころを開いてもらうには
・ 行動をストップすることばは禁物
・ 私の父のさらなる変化
・ ボケから回復力を引き出す「ボケ介護の鉄則」
・ ちょっと〝頭にきた〞ときもあったが
・ 「シェア」する地域づくりから
・ 老人が老人を介護するシステム
・ 昔に戻った父との時間

あとがき