壮年期の夫との死別は妻に何をもたらすのか。死別悲嘆を乗り越えるための策はあるのか。本書は、3人のご遺族のインタビューを分析し、寡婦の現実生活から死者とのスピリチュアルなかかわりまでを考察している。そして著者自身が自らのグリーフワークを振り返り死別にまつわる様々な思いを記述している。終末期医療の現場においては、ご遺族や末期癌の人たちの心情に寄り添うことの難しさを感じている者が多い。本書は、悲嘆を抱える者とのコミュニケーションのあり方やグリーフケアを行うためのヒントとなるであろう。また、誰もが配偶者との死別に遭遇する。遺された人生をどのように生きればよいのか。そのポジティブな方向性を模索する一助となるであろう。
《目 次》
はじめに
第1章 死別後を生きる支えとなるもの
1.家族はなぜ死別後の支えとなるのか
(1)日常生活の維持
食べること・眠ること 消極的自殺
(2)思い出の共有
悔恨 疑念 二人称の死
(3)アイデンティティの継続
二重の喪失
(4)世帯主としての責任
血縁幻想 遺された嫁 悔いのない闘病生活
2.避けられぬ問題
マイナスがプラスになる 現実を生きる
3.物・人・言葉
(1)遺品
遺品の処分
(2)語れる相手
聴く者の役割 遺族ケア
(3)他者とのつながり
友人 メール
(4)癒しとなる言葉
静かに寄り添う こころに届く言葉
第2章 死別がもたらすポジティブな影響
1.妻、嫁としての生活と気持ちの変化
*香織さん *孝子さん *由紀さん
2.個として生きる
(1)役割からの解放
専業主婦の役割 嫁と姑 働く女性へのあこがれ
(2)自分自身と向き合う
自由と孤独 新たな自己の獲得
3.人生観の獲得
(1)人生観とは
(2)命の有限性に気づく体験
死の隠蔽 結婚生活の最終章 命の有限性
(3)平凡な生活に幸せがある
幸せな生活とは
(4)現実を受け入れる
ありのままに
(5)無理をしない
自分らしく生きる
(6)誰かの役に立つこと
(7)今ここに生きる
4.ポジティブな影響とは何か
第3章 死者の見守り
1.死者とのかかわり
(1)死者を弔う
(2)死者との絆
(3)スピリチュアリティ
2.死者を理解する
(1)社会的評価
(2)新たな理解
(3)マイナス感情を語る
(4)死者の物語
3.死者の見守り
(1)いないけれどいる
死者の贈り物
(2)愛着対象は消えない
親密な生活の記憶 リアリティの残像 秘密の共有
4.死者と共に生きる
(1)死者の声を聴く
(2)死者の思いを継ぐ
(3)生きる規矩として
研究について 〜体験者としての視点から〜
1.二人称の視点と三人称の視点
2.対象者の設定に関して
3.データサンプルではないということ
4.倫理的であるということ
5.インタビューにおける不均衡性
グリーフワーク 〜死を納得するために考えたこと〜
1.グリーフワークについて
2.死の意味づけ
癌ができるとなぜ死ぬのか 死んだ身体はどこへいくのか 彼そのものはどこへいったのか
終章 死体 〜死の瞬間から自然に帰るまで〜
あとがき
挿絵・裏表紙絵 齋藤 まみ
定価 本体 2000円+税 ISBN978-4-904363-56―5 C3047
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