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パーソン・センタード・ケアについて書かれた本は、最近でこそよく見られるにようになりましたが、ほんの数年前までは、ほとんどありませんでした。
そのなかでも、この本は、実際に、DCM(認知症ケアマッピング)や、パーソン・センタード・ケアの理念を現場で実践しようと努力した方たちによる、実践報告であることに価値があります。また、執筆者全員が看護師であるところが特徴と言えるでしょう。
今、「実践しようと努力した方たち」と書きましたが、パーソン・センタード・ケアの実践は容易ではありません。
まず、勉強をしようにも研修会や、それについて書かれた本はほとんどなかったでしょう。たった一人で実践しようにも、周囲の方たちの理解が十分でなかったり、誤解されたりと、おそらく大変なご苦労をされたのだと思います。
今でこそ、パーソン・センタード・ケアについて、専門雑誌や学会で取り上げられたり、研修会などが企画されたりすることが多くなりましたが、わずか数年前には、このようなことはありませんでした。
ですから、この本の執筆に参加された方たちは、まだ、パーソン・センタード・ケアの理念が日本に浸透する以前に、さまざまな機会を用いて、自ら努力し勉強をされたはずです。
さらに、周囲の応援もわずかな中で、何とか認知症をもつ人たちを少しでも幸せにしたいという思いで、おそらく手探りで実践をされたその姿を思うとその努力自体に頭が下がる思いです。
誰かが始めなければ何も始まりません。当然,最初はうまくいかないでしょうし、よい結果が得られるとは限りません。
しかし、この本を手に取られた方は、何か日頃の認知症をもつ人たちへの関わりに疑問を持って学ぼうという意欲がある方だと思います。
ぜひここに書かれた実践報告をお読みになり、その努力を感じていただきたいと思います。
そして、ぜひ各地にパーソン・センタード・ケアが根付き拡がるためにも、まず皆さんが第一歩を踏み出すことを期待しています。
本書「パーソン・センタード・ケアの実践に向けて」より抜粋
いまいせ心療センター長/認知症センター長/DCM日本国ストラテジックリード
水野 裕
目 次
1章 パーソン・センタード・ケアと認知症ケアマッピング(DCM)の現状と研究の方向性 鈴木みずえ
◇パーソン・センタード・ケア(Person-Centered Care:PCC)
◇認知症ケアマッピング(Dementia Care Mapping:DCM)
◇DCM法の発展的評価プロセス
◇マッパーとしての経験
◇DCMの評価手法としての信頼性妥当性に関する研究
◇今後のDCMを用いた実践と研究の課題
2 章 認知症疾患センターにおける認知症ケアマッピングを用いた看護実践活動
塚本てる子
◇いまいせ心療センターの紹介
◇マッパーとしての活動
◇パーソン・センタード・ケアの取り組み
3 章 老人保健施設におけるパーソン・センタード・ケアと DCM導入の取り組みの成果 鈴木五月香
◇仁医会ヘルスケアネットワークの紹介
◇スタッフの意識変化
◇マッピングのフィードバック
4 章 看護教員としてのパーソン・センタード・ケアの実践:老人保健施設におけるDCMを活用したケアの検討
稲垣 絹代,八木澤良子
◇DCMの実践
◇DCMの結果
◇DCMの実践を終えて
5 章 パーソンセンタードの視点に立った認知症をもつ患者のケアを目指して:心理・行動症状出現する患者との関わりの場面より
藤崎あかり,大久保直樹
◇心理・行動症状出現する患者との関わりの場面の振り返りの実際
◇A氏の紹介
◇A氏のマッピングの結果
◇場面1:排泄の援助
◇場面2 の結果:荷物の整理
◇PDに値する患者とスタッフとの意思のずれが生じている場面
6 章 BPSD(認知症の行動と心理症状)を有する認知症患者への音楽療法の有効性の検討:DCMとコーエン・マンスフィールドagitation評価票日本語版(CMAI)を用いた看護ケアとしての振り返り
浅井 紫
◇音楽療法の取り組み
◇音楽療法による取り組みの結果
◇音楽療法参加者の紹介
7 章 認知症ケアマッピング法を用いたケアの質の検討:病棟ユニット化の評価と課題 住垣千恵子
◇国立長寿医療センター脳機能病棟認知症専門ケアユニット
◇国立長寿医療センターでのDCM法を用いた取り組み
◇ユニット化の効果
◇今後の課題とまとめ
8 章 老人性認知症疾患治療病棟におけるDCM法を用いたケアの質向上の取り組み
松尾 絵美,渡邉 啓子,川村未也子,田道 智治
◇B治療病棟と入院患者の概要
◇プロジェクトの経過
◇今回のプロジェクトを振り返って
9 章 ケアスタッフの配置人数が認知症高齢者に与える影響
安田 真美
◇ユニットの特徴と介護スタッフの配置人数について
◇職員配置と認知症高齢者への影響-マッピング結果から考える-
◇管理職のパーソン・センタード・ケアの考え方について
10 章 認知症ケアマッピング研修システムとマッパーの現状 本田 恵子
◇パーソン・センタード・ケアおよび認知症ケアマッピング法研修の日本への導入と経緯
◇パーソン・センタード・ケアおよびDCM法の研修について
◇マッパーの現状と看護師受講者の属性分析
◇フォローアップとマッパーの活動
資料
1.わが国のDCMに関する文献
2.パーソンフッドを維持するための積極的な働きかけ:Positive Person Work(PPW) 3.DCMフィードバックセッションのためのガイドライン
4.日本老年看護学会第11回学術集会 交流集会(2006)パンフレット
5.日本老年看護学会第13回学術集会 交流集会(2008)パンフレット
6.認知症ケアマッピング(DCM)って何?
執筆者一覧
編集者:鈴木みずえ・浜松医科大学医学部看護学科教授・DCM認定評価者
執筆者
鈴木みずえ・浜松医科大学医学部看護学科教授・DCM認定評価者
塚本てる子・いまいせ心療センター看護師・DCM基礎マッパー
鈴木五月香・西尾老人保健施設看護部長・DCM基礎マッパー
稲垣絹代・名桜大学人間健康学部看護学科教授・DCM基礎マッパー
八木澤良子・広島国際大学看護学部助手・DCM基礎マッパー
藤崎あかり・国立長寿医療センター看護師・DCM基礎マッパー
大久保直樹・国立長寿医療センター看護師・DCM基礎マッパー
浅井紫・国立長寿医療センター看護師・DCM上級マッパー
住垣千恵子・国立長寿医療センター副看護師長・DCM認定トレナー
松尾絵美・順天堂大学医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センター看護師・DCM基礎マッパー
渡邉啓子・順天堂大学医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センター看護師・DCM基礎マッパー
川村未也子・順天堂大学医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センター看護師・DCM基礎マッパー
田道智治・順天堂大学医学部付属順天堂東京江東高齢者医療センター看護師・DCM基礎マッパー
安田真美・三重県立看護大学看護学部准教授・DCM基礎マッパー
本田恵子・認知症介護研究・研修大府センター研修部・DCM推進室研修指導員・DCM上級マッパー