新刊情報 ★★★★『国際看護学』
この本のタイトルは『国際看護学』であるが,この本を手にした人は,今まで出版されている『国際看護学』の本とはいささか内容が異なると感じられるに違いない。
それは,この本は,8名の執筆者全員が,中央アフリカ共和国に数週間から数十年滞在して,その地で体験したこと,調査したことを基に実体験を書いたからである。執筆者の職業は,社会学者,医師,保健師,助産師,看護師であり,それぞれが専門とする分野に焦点を当てて,調査研究したこと経験したことを記述している。
第Ⅲ部「国際看護学の理解を深めるために」を執筆した内海氏は社会学者で,島国日本から海を隔てる海外諸国の「遠さ」について述べている。グローバル化により世界の情報は机上で簡単に入手することができ,また物理的な距離もハイテクノロジーによるスピードアップや交通網の発達により短縮され便利になった。しかし,日本人にとって海外は,今なお心の距離は短縮されていないように思う。(以下「詳細」からご覧ください)
新刊情報 ★★★★『公衆衛生看護活動論 技術演習 第2版』
第2版の出版にあたり,地域診断・成人期保健活動の章を加え,家庭訪問・母子保健活動・退院支援および生活習慣の見直しと行動変容を支える保健指導を追加し,内容の充実を図りました。
本書の構成と特徴
本書の前半では,家庭訪問,健康教育,地区組織活動,地域診断など公衆衛生看護活動で用いる基本技術について,事例演習に基づき展開しています。後半では,母子保健,成人保健,高齢者保健,結核感染症,難病,精神などの対象別の援助活動です。どこから取り組んでいただいても結構です。
本書の特徴は,事例を提示した演習で構成していることです。演習課題について考えるために必要な知識や考え方を記載しています。事例を通じて学生のみなさんが,様々な個人や家族,集団や地域への活動展開について考えることができ,保健師の活動は何であるかを学びます。また,対象に応じた実践方法を自ら考え,支援方法を導き出すことで,保健師としての活動技術や状況判断能力が向上すると思います。
新刊情報 ★★★★『公衆衛生看護学演習・実習(地域ケア実習)~ソーシャルキャピタルの醸成を目指して~』
地域の保健活動は時代の変化と共にその重要性を増しています。
平成24年には,「地域保健対策推進に関する基本的な指針」が改正され,ソーシャルキャピタルを活用した住民による自助および共助への支援の推進,地域の特性を活かした保健と福祉の健康なまちづくりの推進等多様な保健活動が提示されています。また,地域の保健事業を担っている保健師の業務について,予防的介入の重視,地区活動に立脚した活動の展開,総括的な役割を担う保健師の位置づけ等が地域保健総合推進事業報告書より提言されました。
平成25年には「保健師活動指針」を改正し,保健師の保健活動の基本的方向性,地区担当制の推進,保健師の総括的な役割および活動領域に応じた保健活動の推進などを定めています。
一方で,保健師教育は,平成22年改正保健師指定規則により,公衆衛生看護関連科目28単位以上,公衆衛生看護実習として5単位が明記された。すなわち,大学の講義や演習・実習においても保健師教育課程のさらなる充実と卒業時到達能力の醸成が求められています。
新刊情報 ★★★★『在宅看護過程演習ーアセスメント・統合・看護計画から実施・評価へ』
昨今の社会状況では高齢化が進み,入院期間の短縮,在宅医療の推進等の背景により,在宅ケアおよび在宅看護に対する社会のニーズは高まっています。
1997年カリキュラム改正により,看護の一つの領域として在宅看護論が位置づけられました。さらに2009年カリキュラム改正により,看護の統合と実践のため,「在宅看護論」が統合科目に位置づけられました。講義・演習・実習の一連の看護学基礎教育の重要性が指摘されており,特に在宅看護を実践するという学習のなかで,基本となる看護過程の展開能力をいかに培っていくかは重要な部分であると考えます。
著者らは,在宅看護に関する科目を教授する上で,在宅看護過程あるいはアセスメントに関する参考図書が未だ少ないこと,市内の同じ訪問看護ステーションへ複数の看護系教育機関が実習していますが,使用している看護過程記録の様式も内容も様々である,という現状を把握しました。そこから,看護過程の図書が1冊あるととても便利であり活用してみたいという話に発展しました。
新刊情報 ★★★★『人間科学のためのナラティヴ研究法』
ナラティヴ分析の入門書としての本書の特色を以下に挙げる。
その第一は、ナラティヴ分析法を簡潔明瞭に系統分類している点にある。リースマンは、構造分析、テーマ分析、会話/パフォーマンス分析、ヴィジュアル分析という分類を提示する。リースマンの分類法は明確であり、ナラティヴという概念のもつ幅広さや多様性を取り込んだものになっている。それぞれの分析法の「模範例」として示されている実際の研究例を見ればよく理解されるであろう。
第二の特色は、研究がもたらす知見というものの文脈依存性に気づかせてくれるという点である。従来の研究報告では、語られたデータが示される際に、それがどのような「ローカルな文脈」(研究者と研究参加者との相互作用)の中で生み出されたのかを示すことはほとんど行われてこなかった。リースマンは、自らが行った研究のデータを用いて、そのような舞台裏を読者に見せ、同じデータであっても、異なった方法によって分析した場合には、まったく異なった知見をもたらしうることを示している。
第三の特色は、読者自身による発見を促す、英語でheuristicと表現される態度である。各章には、それぞれの研究方法を示す実例が紹介されている。リースマンの解説に導かれながら、読者は各々の研究例に埋め込まれている様々なヒントを発見していくことができる。
監訳 大久保功子(東京医科歯科大学・教授) 宮坂道夫(新潟大学・教授)
原書のreferencesをご入用の方はこちらよりPDF版でご案内しています。
新刊情報 ★★★★『要介護(支援)高齢者コホート研究』
平成14年までの30年間を岐阜県の保健師としての業務に従事してきた私(三徳)は,寝たきりや認知症高齢者の痛ましい事例に接してきたので,介護保険制度の準備期には画期的な制度ができると喜び,地域の専門職の人々とともに嬉々としてこの業務に専念したものである。一方では,サービスが本当に山間僻地まで行き届くのであろうか,要介護高齢者の実態はどのような状況なのかなどの疑問も持っていた。そんな時,一緒に介護保険制度の勉強をしていたメンバーである新生会八幡病院長の坂本由之先生から「介護保険情報を分析してはどうか」と,お声かけをいただいた。私にとっては「渡りに船」と現国立保健医療科学院の故藤田利治先生,元疫学部長(簑輪)と河口朋子さん,地元郡上市役所の後藤忠雄先生のご協力を得て郡上コホート研究(前向き研究)計画を策定し,郡上市役所,郡上医師会,郡上ケアマネージャー協議会および介護保険関連施設のご協力を加えて,元看護部長である岐阜県中濃地区の美濃病院の市原鶴枝様,中濃厚生病院の山口絢子様,八幡病院の山下淳子様のご支援により,出帆することができた。
一方,富山大学の成瀬優知先生と寺西敬子先生をはじめとするグループの方々も郡上コホート研究と類似の手法での研究を進めておられた。互いにお目にかかり,意見交換をしたのは平成24年の日本公衆衛生学会(山口市)からである。その後は合同研究会を大阪,名古屋,福岡および富山で行い,同時に日本公衆衛生学会自由集会での公開研究会も開催してきた。
新刊情報 ★★★★『コンサルテーションを学ぶ』
コンサルテーションの大切な機能は、コンサルティの人間的な潜在能力を促進し、一人ひとりのコンサルティ個々の中に自己回復の能力を醸成することである。
コンサルタントは、コンサルティが実施するケアを向上するために、相互作用する相談方法を用いることがコンサルタントの専門性である。
コンサルタントは、コンサルティである同僚看護師の看護が向上するためにコンサルターションを行うことで、看護師が新しい環境を患者にもたらし、そして新たな活力をコンサルティにもたらすことが出来る。
新刊情報 ★★★★展開図でわかる 「個」から「地域」へ広げる保健師活動
発刊にあたって
筆者が保健師になった動機は、学生の時の実習にある。当時の科目名は「公衆衛生看護学実習」だったのかどうかも覚えていない。しかし、学生である私は保健師の動きに感動し、目の前で、「地域」の力が見たのである。心底、「おもしろい」と思った。保健師活動に魅力を感じた。
私は、東京都内の保健所で実習させてもらった。新聞の第一面を騒がせた感染症が発生したこともあり、保健所の危機管理の実践に身を置くことができた。学生の私たちは、遠目で所内の動きを見ていただけではあるが、その状況は今でも記憶として鮮明に残っている。
当時の私の実習指導者である保健師の主査は、所長、課長と協議を重ね、保健師に指示を出していた。「大変ですね」と声をかけるほかの部署の職員に対して、主査は「こんなに忙しいのにちっとも痩せないのよ」と答えていた。こんな会話もはっきりと覚えている。緊迫した状況にもかかわらず、逆に周囲を気遣う、保健師の懐の深さに私は感動を覚えた。
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